『Oneshot』感想

 

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※ネタバレ含みます

 

 

ちょっと前にOneshotやりました。
委員長もやってたみたいですし説明はいらないかもですが、Oneshotは元々ツクール2003で制作された2014年公開のPCゲームです。
私がやったのはSteamのリメイク版ですけど。
ややネタバレになる範囲の内容的には、

ユーザーが「神さま」として、光のない見知らぬ不毛の世界に連れられた救世主ニコを導いて、「太陽」の電球を塔へと戻すために旅をする

という感じ。
いわゆるメタゲーの一つに数えられる作品です。ニコや一部NPCはユーザーを認識できて、時にニコと対話したり、ニコから離れてユーザー自身として色々することでニコの手助けをしたりしながら進んでく。
不毛とはいいましたが世界観ゲーなところは多々あるので、雰囲気は保証されています。

ここからは完全なネタバレが入ってくるのでご了承を。

まず大前提として、
・ニコがかわいい。ひたすらにもうこれはそう。NPCもいい人が多い。
・ゲーム性については、ウィンドウモードで結構あちこち歩き回る必要があるので、やや視界が悪いかもしれない。
・メタは設定や会話レベルではなくギミックまで食い込んでくる。アンテやDDLCほど苛烈ではないけど、私は小市民なのでこれはこれで満足した。
ここらへんはみんな書いてるでしょうし、ストーリーの要素のなかで個人的にすきだったところ。
個人的には、神さまをユーザーとしている設定が私はあまり他に例を知らなくていいなと思った。
いや、何もこんな風に俺TUEEEさせてほしいというのではなく。現実の、神が世界を創りたまうたっていう物語を当てはめたら、ゲームにおける神は本来は作者になる。このゲームではそこを外して、かはわからないけど、ゲーム世界に干渉してくるお告げ的存在だからってことで、とりあえずユーザーを神さまみたいなものじゃないかってNPCが推測をしてる。この設定はちょっとシニカルだけど、同時に作品世界が自足してるリアリズムが感じられていいなと思います。

あと、最後の選択肢の演出がとても素晴らしかった。
太陽を戻しに塔の最上階まで上りつめたところで、我々はニコを元の世界に帰すかこの不毛世界を救うかという二択を迫られます。電球を割らなければニコは帰れないけど、割ってしまったら世界はこのまま死んでしまう。この二択自体は終盤明らかになるのでやや唐突に突きつけられるものではあるけれど、選択できるのは一度のみ(one shot)という
かくしてユーザーにはニコか世界か二択が提示され、塔の頂上で選ぶことになるけれど。
提示された選択肢の、選ぼうとしている側を、ニコの目が追ってくるんです。右にやったら右の選択肢を見つめてきて、左にやったら左の選択肢を見つめてくる。見る以上のことはしないし、どっちの結論でもニコは納得はしてくれるんだけど、この演出はおそろしい。これはそのまま、指示は出せるけど、キャラクターはこっちを見ているっていう、ユーザーとプレイアブルキャラクターの距離を問題にした作品のコンセプトそのものを一点に集約した演出でもあるわけです。この演出があって、一度きりの選択と第四の壁を超えた対話という二つのコンセプトが一つにつながっていると思う。

総評として。
やっぱり本作はUndertaleやDDLCほど激烈にクリティカルなメタではないです。
もちろんそれは、技量的な問題よりもテーマ的な違いからくるものとして。彼らが二周三周と回ってゲームの重層性や全貌を把握させようとしてくるのに対して、このゲームはひたすら一過性であることによって語れることを重視したと言えるでしょう。
やや先駆的存在としてMoonがあるかもしれませんが、またちょっとテーマ性は違いますし、その面をより突き詰めた点でもOne shotには固有の価値があったと思います。