おもらしの擬音について考えてみた


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おもらしの擬音について考えてみます。

 

たとえば、「ジョロロロ」がありますよね。
けっこうよく見るやつ。
これは擬音語、擬態語のどっちでしょう。
いや、ぱっと見て擬音ではあるんだけど。
ただ。擬音だとすると具体的に何の音なのかとなる。
普通のおしっこならわかるんです。便器の水の中にするので、じょろじょろって音がする。でも、おもらしは大体パンツの上からする。水に注ぐような派手な音が鳴ることってないわけです。「ロロロ」とかはとくに。
だから、擬音語だとしたら、平常のおしっこの音を慣性でそのまま書いたり見たりしてるということになります。説明にはなってるんだけど、そんなそこまで場違いな擬音なのかって怪しいですよね。
ちょっとWikipedia先生の力を借りてみます。
「ら行」のページを見てみる。「ロロロ」の「ロ」の音。というかラ行の音は、国際音声記号の分類だと語中では「そり舌はじき音」もしくは「歯茎はじき音」という音になるらしい。

子音は気流を妨害する音という風に説明されます。口でジョロロロって言ってもらえたらわかるんですが、歯茎あたりを軽くタップして「ろろろ」を言ってる。口の浅い方で、息を舌尖だけでまるく弾いて発しているこの感じが、膀胱〜尿道から漏れでる感覚を書き出しているんじゃないかと思えるんです。
「シャアアア」とか「じょおお」みたいにしばしば母音をのばす擬音がありますけど、母音は気流が妨害されない音と説明されます。子音は逆に、妨害された音なので、「ロロロ」は単に放出する音じゃなくて、流れに微妙にさわる尿道口の存在も書き出している。
あるいは単純に、漏(ロウ)って音からの後天的な語感もあるのかもしれないけど、とにかく。
ちょっと擬態語っぽくもありませんか?


これはとても仮説です。「しょろろろ」とか「チョロロロ」みたいな近しい音もあるから、比べたらまた違うのかもしれません。
ちょっと「ジョロロロ」だけに時間をかけ過ぎてしまったかも。
おもらし音は幾多あります。
たとえば、「シャアアア」とか。
なんだか「じょおお」とかより開放的なイメージの音ですよね。
別にいちいち理屈づけなくてもよかろうですけど、先述のように母音は気流が妨害されないんですね。シャアアアもじょおおも開放している音というか、決壊してしまって飛んでいるさまを書き出すことに特化してる。
というと、母音をのばすと全部そういう開放的な音みたいだけど。
「しぃーー」なんて音がありますよね。
しーしーするなんて言ったり、「ちー」なんて擬音もあるから、子どもっぽさみたいなものをもってる擬音です。
なんか「シャアアア」とかと比べると、ちょっときゅっ、て横に狭めた感じがあります。
感覚的にわかると思いますけど、イの音はアーとかオーとかと比べて、舌の前の方で気流の通路をちょっと狭めて発音している。


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(よく見る図)
こんなんらしい。舌の位置的に。
なんで、イの音は狭母音って呼ばれたりするらしいんです。
ウの音とかも狭母音なんですけど、ウは舌の後ろの方で抑えるので後舌母音といって、そこが前舌母音のイの音と違ってるっぽい。
舌の浅いほうで狭めてるので、「シャアアア」とかと比べると、「しぃーー」はどこか抑止のまじった音に見える。
開放的な音は、それはそれで放出のどうしようもなさを書き出してくれるけど、こっちは現在進行形で我慢しようと力を入れている抵抗のあとを書き出している。すばらしいですよね。
あるいは、「シュウウウ」なんて音もある。
放出の音としてはやや解釈に困るような音ではないでしょうか。ただ、この擬音はある既存の解釈があって。
パンツのクロッチに当たる音の再現、という非常に強い説がある。
これはもう理屈じゃない。感覚でわかる説得力がある。すごくリアルな状況をとらえたものです。


バレてるかもしれませんが、わたしは開放的な音よりしぃーーとかシュウウウみたいな、どちらかといえば抑制をとらえたような擬音がすきなんです。ここは個人の好みでいいとは思うんですが。
最後に。
は◯みどさんというイラストレーターが、「じゅびー」って擬音を書くんです。
なんかこう、もらしはじめの機微をすごくとらえてる気がして。
語頭の「じゅ」の音は破擦音といって、「しゅ」と違って一瞬舌で息をつよく閉じ込めるらしいんです。それはジョロロロとかのジョも一緒だけど、「じゅ」ってなんか「ジョ」より押さえつけられた感じがしませんか?タバコを押しつけるときもジュって書いたりするけど、限界まで狭めていた口から一瞬「あっ、ヤバっ」ってなって、あとびぃーーって一気に出てしまう変化を母音の差でつけている。
「び」の子音は有声両唇破裂音と言って。一瞬くちびるを閉じて破裂させるように出しますよね。近い「しゅいーー」とかと比べて微妙な引っかかりを書き出しているから、尿道がかろうじて抵抗した音にもクロッチに当たる音にも想像できる。
すごい擬音です。


オノマトペは音を声で再現したものなので、あるていど調音のメカニズムが有効だったりすると思うんです。
とはいえ、こんなアレは後追いの説明に過ぎない。おそらく擬音の多くは語感で書き出されてきたし、そのほうが正確なものや新しい擬音や解釈だってできてくると思う。シュウウウなんて擬音とかはとくに。
ぜひ、この機に皆さんなりのおもらし音の解釈をしたり思い返したりしてもらえたらうれしいなと思います。

めちゃくちゃ余談なんですけど、中学二年のとき、玄関で漏らしたショックでその日の靴を七ヶ月くらい履けなかったのを思い出しました。
みんなやりますよね。

では。

参考:Wikipedia
おもらしの擬音はどれが好き?(アンケート) | ラシン(pixiv)