東武東上線……刺激ホルモン

若葉駅から東武東上線に乗った時のこと。ふと、「東武東上線」という言葉には内分泌系の響きがあるように思った。

 


 

“とうぶとうじょうせん”。

 

言うまでもなく「せん」は「腺」だが、字を充てるとすれば、たとえば「頭部刀状腺」とか、がしっくりくるような気がする。「島部」とかもいいかもしれない。「ランゲルハンス島」感があっていい。いや、でもここはあえて充てない方がいいかもしれないですね。充てないことにしましょう。音だけで、なんとなく内分泌器官ぽさを感じてほしい。

 

ところで。

たとえば、「中央線」とか「京王線」とか「埼京線」には、こういった内分泌系ぽさは感じないですよね。まあ、例えば「京王」は固有名詞的すぎる気がするし、「埼京線」は著名すぎて鉄道路線感が強すぎる気がするから、当たり前かもしれない。だから前述のうちの二者については、内分泌系感がなくても仕方がないのかなって思います。けど「中央線」は、「中央腺」という単語としてとらえることはできてもいいはず。でもそういう気がしないのは、「中央」があまりに汎用性が高く抽象的すぎるからなのか。それとも、「埼京線」同様鉄道路線的すぎるからなのか。もしかすると、音節が少なすぎるからかもしれない。では、音節が多ければ内分泌系の響きが生まれるのかな?

日本の鉄道路線について、Wikipediaであ行から調べてみると、音節数が多い鉄道路線が出てくる。IRいしかわ鉄道線。愛知環状鉄道線会津鬼怒川線あいの風とやま鉄道線青い森鉄道線。うーん、個人的にはちょっと基準にそぐわない。まず、「鉄道」と入ってしまうものはよくない。「てつどう腺」は現実的ではない。あと、著名な地名が入っていたり、格助詞が入っていたりするのもダメっぽい。

そんな中、かなり良いものを見つけた。「阿蘇高原線」である。阿蘇じゃん、と一瞬思ったんだけど、「あそこーげんせん」と聞くと、「アソコーゲン腺」という響きがある。アソコーゲンという糖類、ありそうです。

ただ、「阿蘇高原線」と「アソコーゲン腺」ではアクセントが違うんですよね。「阿↑蘇↓高↑原→線→」と「ア↓ソ↑コーゲン腺→」では、話が違ってくる。

アクセントを変えずとも内分泌系ぽさのある東武東上線、すごいです。

 

電車は和光市駅に停まりました。

東武東上線」の内分泌系ぽさは、いったい何ゆえなのかと思うのですが、やはりいちばんは「東上線」の部分が「甲状腺」に近いから、に他ならないでしょう。表題に「刺激ホルモン」と付けたのにも、やはり「甲状腺刺激ホルモン」のイメージが強かったから。

じゃあ、ほかに「~じょう線」みたいなのはないのかな? と思い、調べると……ありました。「大阪環状線」! ですが……これはだめです。言うまでもなく「大阪」が強すぎる。虎の縞模様が目に浮かびます。同じ大阪でいうと「堺筋線」とかは字面はすごく筋繊維っぽいんですけどね……「さかいすじせん」なのでだめですね。

 

他にないのかな、と思ってWikiのページをスクロールしていたら、今までの前提すべてが覆りそうなことが書いてありました。

東上本線東武鉄道)」。

えっ、東武東上線の正式名称は「東上本線」なの!?

東武東上線」って正式名称じゃないの……?

 

まずいです。このままでは「最強の内分泌系ぽい路線名」ではなくなってしまう。

「とうじょうほん腺」なんてあるわけがない。

どうしよう……そうだ!💡

もう、この際、Wikipediaは見なかったことにしましょう。

無視しましょう。

・・・・・・ということで、やはり最強の内分泌系路線名は「東武東上線」です。ああ、決まってよかった。決めました。やっぱり「東武東上線」以外ないですよね。ありません、終わりです!

 

うーん、いい感じの落としどころが見つからん! やばい! と思いつつ、いやーっ でもこればっかりはしょうがないかぁ、勢いで電車の中で考えただけのことだもんなぁ、次は「いちばん糖類っぽい高原ランキング」でもやろうかな! でもめんどいからやめよかな!

そんなことを考えながら、私は終点の池袋駅で降りたのでした。